魔法の国の
デザインランド

魔法の国の<br>デザインランド

ポール・ランド。

若かりし頃に、多くを(勝手に)学ばさせていただいたデザインの師みたいな人。影響を受けている現役デザイナー多数だと思う(もちろんわたしも)。
ランドな風味のデザインは、そこここに目にする。彼がいなかったら、今世の中にあるスタイルのデザインは、まだ存在しなかったかも知れない。

いわゆるグラフィックデザイナーとして、メジャーでメインストリームにいた方。ビッククライアントとの仕事も多くをしているが、アシスタントを多数抱えたスタジオにはせずに、個人で、自宅スタジオで仕事をしているところにもとても好感。

自宅の仕事場はいい佇まいがあり、スケールレベルは及ばないけど、影響受けて大いに参考にさせてもらいました。
ランドの自宅スタジオは、現在どうなっているのかググってみたらfor Saleになっているのね、、。しかも約90万$!

彼のデスクの前にもマグリットのパイプのポスターが貼ってあるのが親近感。打ち合わせの椅子が、トーネット。デザイン、デザインしていないチェア。
自宅での仕事を選択するということもそうだけど、日常と仕事がつながっていながらも、仕事は一流というところも共感。人間には、仕事を家に持ち込むか否かで二分する。特にデキる男は、持ち込まないのが美学という人たちを多く見てきたけど、改めて思うけどやはりそれは不自然だよなぁと。

Olle Eksell, Dick Bruna, Paul Rand

この時代は、アメリカのデザインが世界で一番勢いがあった時かと。
イームズとか、ジョージ・ロイスとか、たくさんのデザインキングがアメリカにいた時代。アメリカンデザインはストロング・スタイルでマッチョなものが多い。
そんな中
ランドは少し、ヨーロピアンな趣きも入っている感じがする。彼のグラフィック・デザインは、ブルーナとも似た雰囲気は感じる。また全体のスタイルは、オーレ・エクセルの方が仕事の傾向が近いのか。
その3人はみな、作品にかわいさがあるところが好き。

絵本もどれもかわいい。絵がいい、洒落ている。アン・ランド夫人は、オーレ・エクセルとも絵本を作っているが、ランドとのコンビの方があたり前だがしっくりくる。ちなみに、日本語版はどちらも谷川俊太郎が翻訳。谷川さんが翻訳している絵本は、全部いい。それはそれでスゴイなあ。「ピーナッツ」をはじめ、「ペテェッテイーノ」、「てん」は定期的に見たくなる。

ランドのクライアント・ワークスでは、CIも好き。いわゆるアイデンティティからはじまる世界観づくり、ブランディングってやつのはしりですか。
が、しかしIBMの現在は、なんだか寂しいですね、、。チェスプレイヤーと戦ったり、2001年宇宙の旅のHALなんていうのもいたりと、コンピュータ世界のまさに巨人だったけど。そういった意味では、ランドがやる仕事ではなかったのかも。

ランドの仕事しては、NeXTの方があっていたのかも。初めて見た時は、けっこう衝撃的にいいねと思ったロゴマーク。ジョブズが10万ドルで発注したとか、してないとか。
しかしいずれにせよ、IBMのランドに頼むのは、ジョブズの気合も相当なものだったんだろう。Macを追い出されたジョブズからすると、まさにリドリー・スコットの1984のリベンジのリベンジ。



後のMac OS Xのベースになった時に、せめてOS NeXTとかにして、うまいことロゴ使ってくれたらよかったのにねぇ。昔のハッピーマックとかアイコンが懐かしい。アップルのインターフェイスは、あれらを今も進化させた方がいいなぁと個人的には思う。
NeXTのシャツを着ているジョブズ!この頃から黒タートルにジーンズスタイルだったのね。
https://www.paulrand.design/work/NeXT-Computers.html

YEALロゴも、現在はずいぶんとシンプルになって、とてもスマートなのだが寂しい。印象が薄い。新しいCIは、マシュー・カーターによるタイプフェイスで、WEBサイトもすっきり今どきなデザインになっている。が、やはり味気ない感じもするなぁ。フォントの完成度は当然ながらとても高く、使い所は特に無いけど思わずDLしてしまったけど。。

ランドが創るロゴは、まるで絵のように縦横斜・自由自在に文字をバランスよく操るスタイルはとても影響を受けている。わたしも絵を描くのと、デザインする行為は同じようなものだと思う。

いま思うとiiYOUのロゴマークも知らず知らずだけど造形の考え方の影響は受けているのかなぁとも思う。創る上でのマインドの方向性は違うから、あまり意識はしていなかったけども。

ちょいと話はそれてしまいますが、NASAのワーム・ロゴという傑作がありまして。個人的にはNASAと言えばワームだったのですが、当時のNASAの偉い人が、以前の宇宙空間を描いた超絶説明的なミートボール・ロゴに戻してしまうという過去があり。想像力が少なめな方がリーダーだと、ホントにそのような事態が起こりえるのか!と、長らく残念に思っていたら、最近のスペースX。技術もスゴイがワームを復活させているのがすごい。最新のロケットや宇宙服にレイアウトされていてもまるで違和感がない。いいものは、古くならないですね。ワームにまた戻したらいいのに。勝手な推測ですが、イーロン・マスクの希望もあるんじゃないかと。彼にはジョブズ的なところを感じる。
ついでに言うと、テスラのサイバートラックのデザインは、なかなかなモンだと思う。あれ実際に街で見たら風景が変わるくらいのものですね。サイズがもうひと回り小さければ久々に欲しいと思えるクルマですね。
個人的には、テスラはロゴマークがもうちょいなのか惜しい。車のエンブレムってすごい重要。ついでに余計なお世話ですが、マツダもエクステリアのデザインは洗練されてきているけども、エンブレムは昔の方がかわいいですね。

こうしてみると、広告やCIなどクライアントワークスというものは、よほど双方のミッションの方向性が同じでないとうまくいかない。アンハッピーになる。
それは、ビジネスの根幹にかかわる、何故にそれを創るのか?というところの想い。

人格ある企業か、否か。

企業といえども人格を持つと、使命や信念をブレずに進める。
やっぱりにんげんだもの。

ランドのお墓はNeXTを思わせるキューブのデザイン。昔、本で見た時はクールだと思ったが、近年の写真をみると経年劣化が見えてくる。こういったモダンなデザインにおける「時間と味わい」の計算は難しい。ソリッドなものこそ常にメンテナンスが必要なるのか。そして正方形といったシンプルなフォルムが、必ずしも普遍的なカタチというものではない事を教えてくれる。
クルマのデザインも、多少汚れたり傷があっても美しいものが好きですね。FIAT Pandaはよかった。ちなみにわたしはほとんど洗車をしない派ですね。

ところで刻印されているPAULのUをVのフォルムになっているのは、あえてなのだろうか?Aの横棒を抜いたのはいいのだが、気になる。ランドの最期のなぞかけか (㊀ö㊀)