ウェグナーは
洗練された
プリミティブ
2020 01.11 4:21
Hans J. Wegner|ハンス・ヨルゲンセン・ウェグナー。
13歳から家具職人に弟子入り20歳で一度兵役に出て23歳でコペンハーゲン美術工芸学校で家具設計をし、アルネ・ヤコブセンの事務所に3年ほど、そして独立。生涯で500種類以上の椅子をデザインと言われる、巨匠デザイナー。
世界中で最も売れた椅子のひとつと言われているCH-24、通称Yチェア。多くの人はどこかで目にしたことがある椅子だろう。ウェグナーのことも知らない人たちにも、さらりと入り込んでしまう間口の広さがある。
しかしこの椅子、興味深いのは、デンマーク工芸博物館で見た中国の伝統的な椅子(圏椅/クァン・イー)からのインスピレーションなのだが、中国風味はかなり薄い。というかほぼ感じられないのは、なぜかというところ。

我が家でも、Yチェアは20年以上使っている。質感の経年変化もいい感じである。なにより特筆すべきは全く壊れないこと。座面のペーパーコードも猫の爪とぎにも負けない。
全体的に美しいデザインだが、特に上からのアングルは座るたびに「ふぅむ、スゴイ」と感心させられる。もちろんウェグナーは意図していないでだろうが、わたしにはアフリカの彫刻的な造形に見えてしょうがない。
ウェグナーは同じ北欧デンマークのデザイナーでも、誰よりもアバンギャルドなデザイナーだと見ている。そこにはしプリミティブで有機的な生命感も併せ持っている。
一般的に前衛的なデザイナーと言えば、ヴェルナー・パントンやクールなポール・ケアホルム、ジャン・プルーヴェあたりが思い浮かぶのだろう。彼らはわかり易く前衛的ではあるが、内面からの芯がぶっといホンモノはウェグナーが一番だと個人的には思う。

ウェグナーがデザインした椅子に関して言えば、EJ100のOX-chairなんてさらにアフリカの木彫りの彫刻の造形だし、GE225・Flag Hailard Chairは他に類のないデザイン。間違いなく猫たちの狂喜乱舞になるだろう。Three-legged Shell Chairはウッドなのにスペイシーでとても彫刻的なデザイン。他にもいろいろ魅力的な椅子を多数生み出しているが、それらの椅子と通じて、ウェグナーのデザインからは、洗練されたプリミティブといったものを感じる。
職人という面からみても、椅子、ソファ、テーブルなど何年も使用しているけど全く壊れない、ヘタレない、猫にも負けない。納得のマイスター。
我が家で言えば、同じ北欧系の家具たちがリペアに出したり、寿命がきてもウェグナーだけは、座面の張替えくらいで根本的なリペアには至ったことはない。丈夫という利点。これは「家具」というモノの存在から考えると、ある意味一番大切な機能ではないか。
わたしの場合、日常リビングや仕事場では、ほぼPP701・Armchairに座っている。
当初の豚革は薄いピンクでとてもキレイなものであったが、汚れが目立ってきて、4年前くらいにエゾ鹿革に張り替えた。黒い牛革のものは全然大丈夫で、問題なく12年以上座っている。

腰かけと腕置き兼用の大きなアームは造形的にも、➕の継ぎ目も、もちろんカッコいいのだが、これまた上からのアングルが美しい。いつも座るときに見惚れる。
さらに椅子単体としてだけでなく、テーブルとの合わせも計算されているところ。椅子から離れるときに、テーブルにアームの先端だけが少し隠れる感じが美しい。もちろん使用感は申し分なし。座面も低めなところも心地よく。Yチェアもいいけど、アームチェアは座面がフラットなので座り方を強要させるところがないのでさらに座りやすい。

実はアームチェアとならんで、候補に考えていたのはSwivel Chairというものだが、これで仕事をするとサイコーだなと、お店に座らせにもらいに行ったりもしたのだけど、椅子にしてはスゴイ値段で諦めた、、。当時のFIAT Pandaが買える値段であった。ちなみに、Pandaのシートもシンプルだけど悪くない。12万キロ走ってもへたらなかった。
ちなみに、アーロン系のハイテクチェアは座り心地が良すぎるし、スタイルも仕事する感が出すぎて好きでない。昔は座る時間が長すぎてギックリ的な腰痛にもなったので、背もたれがないやつとかもいろいろと試したのだけども、今ひとつ馴染まなくて。結果、気持ちのいい椅子にして、そして長時間座らない。といった事が解決策であった。
エンツォ・マーリも、いい椅子とは?についての質問で「長時間座らないのが一番いい」みたいな事を言っていたような気がする。うろ覚えだけど。

ウェグナー没後、近年発売されたCH88P。雰囲気は、PP701と似ているが座り心地はかなり違う。これはまだ完成されていなかったのか。座面を高くしたのも間違いじゃないかと思う。ウェグナーは、座面低めが座りやすくていいところであり、あれば好みだけでなく、機能的にもあえて低くしたのだと思う。
ウェグナーは椅子だけでなく、他の家具も素晴らしいので機会があればまたいつか書いてみよう (㊀ö㊀)





